エル・ゴラッソ総集編2019

ノエビアスタジアム、DAZN 、スポーツバー。場所は違えど、リーグの試合はほとんどライブで観た。それくらい毎週末が楽しみな2019年のヴィッセル神戸だった。毎年恒例のエル・ゴラッソ総集編(しかも今年はクラブ別もある!)を読んでいるうちに、ちょっと振り返ってみようとノートパソコンを開いてポチポチし出したら思いのほか長くなってしまった。

開幕前からワールドクラスのプレイヤーを次々に補強

ダビド・ビジャ選手、山口蛍選手、西大伍選手など、世界を知る選手を補強して挑んだ2019年シーズン。「イニエスタとビジャのホットラインすげえ!」「イニシャルとってVIPや!」「蛍とサンペールで中盤が安定したな!」とかみんな言っていた。実力のある選手たちのスーパープレイを観ることが楽しかった時期がいくらかあったのだ。
しかし、夏前くらいになって「あれ、なんかおかしない?」となってきたわけだ。

覚めない悪夢 7連敗

「勝ってないという事実」を心のどこかで見て見ぬフリをしたかったのだろうか。今日もスター選手たちのスーパープレイの数々を拝めて、まあ満足満足とニコニコしていたのだ。しかし、チームがここまで負け続けるという異常事態。

「バルサ化」という新たな神戸のビジョンにおいて突然のリージョ監督の退任、ポドルスキ選手の戦線離脱を経て、いよいよチームは勝てない時期に突入していく。7連敗。

2018年同様、また「残留争い」という言葉が忍び寄る悪夢の再来である。
この期間の息子の機嫌の悪さはトラウマになっている。頼むから勝ってくれという願いも届かず負け続けてしまったのだ。

新監督にゲルマン魂がスーツをきめてやってきた

開幕時点での監督フアン・マヌエル・リージョ氏は「自信をもって送り出した選手たちを信じている。ゲーム中に伝えることはない」というスタンスだったそうだ。確かにリージョ監督がベンチから立ち上がるところをあまりみたことがなかった。その後、吉田監督の再登板もあったが成績は上向かず。

そして6月。現役時代、ドイツ・バイエルンで欧州CL優勝経験があり、指揮官としてハンブルガーSVなどを率いた経験を持つトルステン・ファンク監督が就任した。リージョ監督とはまた違ったタイプのように見えた。

屈強な肉体と、喜怒哀楽にもどこか愛嬌のあるナイスミドルのドイツ人監督は、とにかくゲーム中でも身振り手振りが大きい。ラインを超えてピッチに入っていくんじゃないかと思うほど、選手たちに近い位置で細かく指示を出している。クール、悪く言えば競争心がないといわれていた神戸の選手たちに対して、「これがゲルマン魂か」を地でいくような情熱家タイプのフィンク監督は、なにか気持ちの部分を吹き込むことができた船長なのではないかと思うほど、就任後の戦績は回復の兆しを見せた。
いくつになっても情熱を持ってる男は見ていて気持ちいいものだ。

ヴィッセル神戸公式サイトより

もっともこの時期にはさらなる大型補強を行ったということも大きな要因だと思われる。

最終ラインの強化で安定性を図る

ところで、ヴィッセル神戸の数字上の分析として2019年を締めてみたところ、得点力はリーグ内において2位だった。得点力1位は横浜Fマリノス。この横浜Fマリノスがリーグ優勝を果たしたのに対して、得点力2位のヴィッセルはリーグ戦8位で終わった。得点以上に失点していたということである。

1点2点取って勝っていても、それ以上に点を取られて負けるという歯がゆい思いを何回したことか。守備をつかさどる最終ラインの強化はかねてからの課題といわれていた。

そこで夏から秋にかけて守りの強化を図る。FCバルセロナのDFにして現役ベルギー代表トーマス・フェルマーレン選手。ドイツブンデスリーガで日本人初のキャプテン経験を持つ酒井高徳選手。さらにGKには横浜Fマリノスの守護神飯倉大樹選手を獲得した。

この補強は目に見えて効果があり、失点につながるミスは激減。同時に「守備の向上=攻撃の起点」という発想で、もともと高かった攻撃力がさらに加速する結果となったように思う。

ヴィッセルのラストピースが酒井高徳選手といわれる所以だろう。

また、「プロ同士本音で要求し合う雰囲気」をチーム内に伝播させたという同選手のコミュ力の高さも有名な話。

祝・天皇杯決勝進出、そして優勝

個人的には「ビジャ引退」のショックでなんかよくわからないうちに、天皇杯の決勝にまで勝ち進んでいたヴィッセル神戸。年末の仕事の忙しさも重なり気づけば年の瀬を迎え、明けたら初タイトル獲得に沸いた2020年の元日。絶対王者・鹿島を破って手にした天皇杯はヴィッセルの強さが本物であることを証明した。「引退するビジャに有終の美を」というムードがチーム内の士気を高めたそうだが、なんのことはない「やっぱりビジャは持ってるな」という結論に落ち着くくらい、しっかり優勝を勝ち取って日本を去っていったのだ。

ヴィッセル神戸公式サイトより

翌日、神戸のメリケンパークで行われた優勝報告会で、長年のファン、サポーターの人たちと話していると、ヴィッセルが優勝する日がくるなんて…と自分たちもちょっと驚いたという反応が多かった。25年追いかけてるってすごいことである。たしかにそれはもはやチームの一員以外の何者でもない。

祝・ゼロックススーパーカップ優勝

前代未聞といわれた9人連続PK失敗とかあったけど、それは抜きにしても見応えのある内容だったと思う。安定感がありシンプルに強い。そんな印象だった。天皇杯の勢いそのままに攻撃力No.1の横浜Fマリノスを相手に打ち負けなかった90分は本当に見事であり、得点しては追いつかれるという展開にはハラハラドキドキが止まらなかった。
サッカーは観るのも疲れるんやなと心底思った一戦だった。

ヴィッセルの名に恥じない勝利の船出

ビジャ選手、ポドルスキ選手がいなくなった攻撃力ダウンは大きいものの、守備の安定性が実を結んだ今、2020年シーズンのヴィッセル神戸はかなり期待できると思うのだ。事実、天皇杯、ゼロックス杯をたて続けに制し、ACL初戦も危なげなく勝ち点を獲れている。
選手層の薄さが懸念されているのだが、控え選手も若手選手もなんのなんのと実力者ぞろいである。夏の移籍市場では、またまたビッグネームが噂されているのも楽しみだ。

VISSELというクラブ名は、VICTORY(勝利)とVESSEL(船)を組み合わせた造語になっている。残りのタイトル獲得に向けて、港街神戸から今年こそ優勝に向けての船出と行きたいものだ。

魅せて、勝って、道を示すフットボールの天才

アンドレス・イニエスタ選手がヴィッセル神戸と交わした契約期間は残り2年。年齢的にもこの2年が選手としてのひとつの節目になるのではないかといわれている。「人は時代と年齢には勝てない」と野球の野村監督は言葉を残した。まだまだ観たいと思うからこそ、「現役」という限りある時間が輝くのである。
芸術点の高い魅せるプレーで観客を酔わせ、チームを勝利に導くアシストを惜しみなく生み出し、ACLでは豊富な国際大会での経験で進むべき道を示してくれているかのよう。ヴィッセルファンのみならず日本のサッカーファンに夢を見させてくれているのではないだろうか。
あと2年と考えると早くも寂しくなるのだが、チームをどこまでの高みに連れて行ってくれるのか、期待せずにはいられない今シーズンなのである。やると言ったらやる男気を感じさせるスペインの至宝。ケガだけはしないようにしてほしいものだ。

2019年のヴィッセル神戸の歩みをまとめた一冊

「エル・ゴラッソ 総集編 2019 ヴィッセル神戸 365」という本を読んだ。2019年のすべての試合、出来事についてかなり詳しくまとめられた永久保存版の一冊である。大型の紙面で読み応えも満点。イニエスタだけではないそれぞれの選手たちがフォーカスされているから、最近からヴィッセルを応援するようになったという僕のような層にもおすすめの一冊だ。
紙面デザインがかっこいいのもコレクティブな価値があっていい。

 
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